“消夏法”とは暑さをしのぐ方法と辞書にある。「暑いですね、去年よりも体にこたえますね」という合言葉が挨拶になっているが。

さて、去年はどうであったかと日記をみると、7月6日、昨年冷夏のせいかこの暑さがなつかしいと同時に体が対応できるかどうか心配だ、に始まって“涼しいという字を忘れたね”“暑いという挨拶より言葉はないの”“動くだけで汗”“炎暑、猛暑、酷暑、熱暑”のオンパレードである。

9月9日、季節は初秋、温度は真夏と気象状況を中心として雑感を書き留めている。

去年の暑さは忘れたが、今年の猛暑は梅雨あけの7月23日参院選投票日から突如30度オーバーとなり体温調節にとまどい変調を来たした。

活年の知恵で変調を順調にする10の快=快食、快便、快眠、快足、快汗、快欽、快煙、快談、快笑、快感=に気配りすることでやる気の基礎をつくる。こうして心身共に暑さに馴れると猛暑もまた楽しい。「暑くなければ夏ではない、照るほどに稔りの秋とさわやかさの喜びは大きい」と軽口がでる。

畏友K君から例によって独特の“夏紀行”が届く。「都内区分地図と文庫本を携えてJR山手線に乗る。一周約60分、冷房つき、曜日、時間帯で変わる人間模様を観察、読書にあきれば中吊り広告をみて世相散見、まさに社会の縮図の動画をみるようで興味がつきない。

思えば半世紀に及ぶ行動の時間、範囲は決まった時、会社への通 勤、夜の俳個の場所、つき合う相手もメニューも定まったものでよくこの年まで生きたものだと深く反省している。

時間的、空間的に限られた生活習慣による視野狭窄(きょうさく)症を修復したいと電車を利用する。

殊に夏は素晴らしい。働く者、疲れた営業マンらしき若者が休養をとる様子、お盆さんになればターミナル駅から乗降する地方色と香りを漂わした老若の人々、山へ海へと出かける若者の群れに圧倒される心地よさ。

それぞれの人がそれぞれの装いと目的をもって同行している人間集団をみてお互い生きているという時間を共にしている有難さを実感する」 K君の素敵な消夏法にあらためて敬礼。