家族 (嫁・50歳) 85歳の義母のことですが、足腰が痛いと言いながら、元来専業主婦で家の采配をしてきた人なので、食事の支度や買い物は張り切ってしていますが、最近、物忘れが目立つようになりました。介護保険の申請をしたほうが良いのでしょうか?

ケアマネ 物忘れが目立つとのことですが、物忘れで困っていることなど、具体的に教えていただけますか。

家族 買い物に行くのは良いのですが、豆腐や油揚げなど冷蔵庫に入っているのに、毎回同じ物を買って来る。どうしてか尋ねると、「あら、そうお」。少しきつく言ってしまうと、「私じゃない、あなたでしょ」とそっぽをむいてしまいます。

ケアマネ 専門医に相談されたことはありますか。

家族 通院を勧めましたが、本人は「どこも悪くない。呆け扱いはよして!」と怒ってしまうんです。嫁なので、それ以上のことが言えなくて…。

ケアマネ そうですよね。出来るだけ物忘れが進まないように、何かいい方法を考えて行きましよう。

家族 助かります。どんな方法がありますか。

ケアマネ 「物忘れ」と言っても、いろいろなタイプの物忘れがあります。本当は、専門医に、どのような物忘れなのかを、診断してもらいたいのですが、ご本人が拒否されている状況では、今すぐ受診ということは難しいですね。そうだとしたら…。みんなと話をすることは、脳に刺激を与え、物忘れの進行を遅らせると聞きます。今は買い物以外に外出したり、みんなと会って話をするような機会はありますか。

家族 以前は町内の趣味のサークルに入っていたり、近くに友人もいたのですが、みんな年をとって亡くなられたり、施設に行かれたりして…。そういえば外に出て話をする機会はめっきり減りましたね。

ケアマネ そうですか。同年代の人と話をする場所として、デイサービスなどがあります。以前デイサービスは、自宅で入浴ができなくなったので行くというイメージがありましたが、今は事業所ごとに様々な特色があり、足腰が弱くなって出かけられなくなったので、交流や会話を楽しむ場として利用するというような方も沢山おられます。

家族 デイサービスという名前は聞いたことがありましたが、楽しそうなところですね。お義母さんは、みんなと話をするのが好きなので、良いかもしれません。でも、足腰は丈夫なので…、それでもデイサービスは利用出来ますか?




ケアマネ 介護保険のサービスを利用するきっかけは、皆さんそれぞれです。足腰が丈夫でも、物忘れが酷くなったからということもあります。いずれにしても、介護が切実にならないうち、介護保険の要介護認定の申請をしてください。「本人が拒否するから」、「家族がいつも家にいるから」と、利用しない方もおられます。けれど介護保険のサービスは、本人のためにということは勿論のことですが、介護の負担を軽くし、介護者が元気に介護をしていけるように利用するということも、とても大切なことです。「物忘れをする」という共通の症状であっても、その人が今まで生きてこられた過程、背景で、関わり方や対応は違います。みんなに関わってもらい、いろいろな方向から見てもらえることで、自分だけでは気がつかなかったことに気づき介護をしていける、それが、無理なく介護を継続していけることにも繋がります。くれぐれも、一人で抱え込んで、疲れ切ってしまわないようにしてくださいね。

家族 申請先は、どこでしょうか?

ケアマネ 市町村(役所)の介護保険担当課に出向いてください。地域包括支援センターでも受け付けていますよ。

家族 早速申請してきたいと思います。ありがとうございました。

たかはし まゆみ
山形県高畠町の「高畠ふれあいケアセンター」に勤務。
くらしのこころ学のメンバー。
介護保険法において要支援・要介護認定を受けた方からの介護全般に関する相談援助や関係機関との連絡調整役を担う。

高齢化社会を迎えた今、介護は多くの人にとって身近な問題となりました。「介護」に苦しさや辛さを感じ、疲れきってしまわないよう、日常生活をいかにラクにするか。サービス活用術など、介護に役立つ知恵を紹介します。

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