桜の蕾もふくらみ始め、日に日に春めいてまいりましたが、皆様におかれましては、お元気にご活躍のことと思います。

さて、私が「くらしのこころ学セミナー」を開催している中では、毎月本当にいろいろな方のお話を聞かせていただきました。

前号では私がセミナーを開催し始めた頃に出会った一片の詩「かつお弁当」を紹介しました。この詩からセミナーに参加されてる1人のお母さんから、とても素敵な話を伺いました。その方は、セミナーに参加すると、必ず家に帰って夕食時には、今日はどんな話があったか、どんなことを話し合ったかなど全部家族に話をされてたそうです。前回の話の「かつお弁当」の詩を学級で読んで、私が九州大学心理学講師(現・九州大学大学院人間環境学研究科教授)の北山修先生の講演で聞いた「人は誰でも『あの母親の子宮に戻りたい』と無意識に願って生きている」すなわち「人が本当の自分でいられるところは、母の腕の中である」という話をしました。その時も家に帰って、家族にその話をされたそうです。

その方には4人の子どもさんがいらっしゃるのですが、高校生の娘さんはお母さんが学級セミナーに参加される以前は、すごい反発をしていて「お母さんなんて大嫌い」と言ってあまり話もしなかったそうです。その娘さんが、朝、お母さんに起こされた時、

「お母さんがこの間、人は誰でもお母さんの子宮の中に戻りたいと願って生きているって話してたけど、聞いた時は、お母さんの子宮の中ってどんなだろうって思ってよく分からなかったけど、お母さんの子宮の中って、きっと、このお布団のように、あったかくて、優しくて、気持ちよくて、いつまでも出たくないような、こんな感じかもしれないね、お母さん」

そう言ったそうです。そしてある日、ご主人が勤めから元気なく帰宅するなり一言『もう会社に行きたくない』とあまり口も聞かず寝てしまったそうです。翌日は休日でもあったのですが、なかなか起きてこないご主人に娘さんが、

「お父さんも、今日はお母さんのお腹の中から出たくないのね」

と言って優しく笑ったそうです。私もいつの間にか優しい気持ちになれて、和やかな家庭になっていましたと喜んでいました。

セミナーに参加する以前は、毎朝、「何やってるの、早く起きなさい」「うるさい、ほっといて」

そんな怒鳴りあいだったそうです。セミナーがまさに生活の中に生かされてきた話だと思います。

次回は、それぞれの家庭の朝のひととき、1日の始まりをどうスタートさせているのか…、そこから繋がっていくものは? その辺からお話を進めていきたいと思います。

平成10年2月(第4号)