「海藻おしば」が教えてくれたこと
野田三千代(のだ・みちよ)
 

海の中にも森があります。そして、その森は絵の具よりカラフルです。多様な生物を育み、海水を浄化する海藻の森は、海水が濁ると光が不足して枯れてしまいます。陸上の植物と同様に、海藻にとっても「光は御飯」なのです。カラフルで美しい「海藻おしば」は、海の森からのメッセージです。かけがえのない海の自然を大切にしましょう。


海中の森(静岡県下田市・水深5m)
 
今から46億年前に誕生した地球に、最初の生物が登場したのは40億年前頃のことで、その舞台は海中でした。陸上に生物が進出したのはそれから35億年ほどたってからで、その頃ようやくオゾン層ができて陸上を有害な紫外線から守ってくれるようになったからです。その大切なオゾン層は、海中の植物プランクトンというミクロな藻類が光合成をいとなんで発生した酸素からつくられたものなのです。


 
 
治岸の海底に見られる褐色の海藻の森は、多くの魚介類の住みかや産卵場となるばかりでなく、葉状の微生物や小動物たちによる食物連鎖を通じて海水を浄化しています。海の森はまるで高層ビルのように立体化したフロアのような葉に、それらの生物を住まわせていますが、コンクリートづくりのビルと違って太陽の光をカロリー源にして生きているのです。そのために海水が濁りすぎると、海の森に十分な光が届かなくなり海藻たちは枯れてしまいます。

 
 
私たちが呼吸で吸い込んでいる酸素も、そして上空のオゾン層も、皆植物が光合成をいとなんでつくったものです。原始地球の大気中には多量の二酸化炭素が含まれていましたが、30億年前頃から海中で光合成をいとなみ始めた植物プランクトンによって、また4億年前頃から陸上で発達した森林によって二酸化炭素は吸収されました。同時にオゾン層ができ、そのお陰で生物は陸上でも暮らせるようになったのです。海中の二酸化炭素を吸収し酸素をつくり、オゾン層で人間が生きていける環境をつくる海の森の海藻たちは、私たちの暮らしに大切な役目を担っているのです。私たちの生活の場は、海の森の生い茂る沿岸部に一番近いところです。海の森が健全に育つよう、十分な光合成ができるように海を濁さないことは、21世紀の地球に暮らす私たちの役目なのです。

ヲ「海藻おしば」についてのお問い合わせは 野田三千代
kaisouosibanoda@ybb.ne.jp