若い世代の「古典離れ」は著しく、教授時代は、学生に古典文学の魅力を伝えるため尽力してきた。退職後は、地域の文化向上を目指す友人らと文芸懇話会を立ち上げた。昨年、研究成果 をまとめた『中世文学序考』で、日本文芸大賞研究努力賞を受賞。特に同書に収めた「平家物語の女性像」が注目された。現在、ライフワークの「平家物語と仏教」研究に取り組んでいる。
いかばかり心のうち涼しかりけん
たゝ゛今の一念空しく過ぐることを惜しむべし
人 死を憎まば生を愛すべし 存命の喜び 日々に楽しまざらんや
この一矢に定むべし
人は天地の霊なり
天性その骨(こつ)なけれども
木の葉落つるもまづ落ちて 芽ぐむにはあらず
花は盛りに 月は隈なきをのみ見るものかは
大なる職をも辞し 利をも捨つるはただ学問の力なり(完)
せきぐち ただお
昭和10年 埼玉県生まれ。
早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、同大学大学院文学研究科日本文学専攻博士課程終了。目白学園女子短期大学教授を経て、大東文化大学教授の後、現在、大東文化大学名誉教授、早稲田大学国文学会名誉会員。平成17年11月、日本文芸大賞研究努力賞受賞。
主な著書
『中世文学序考』(平成4年初版、同14年再版 武蔵野書院)
『往生伝の研究』(共著)(昭和43年 新読書社)
『日本文学史』(共著)(昭和51年 桜楓社)